大判例

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福岡高等裁判所 昭和29年(う)1937号 判決

原判決は、被告人が法定の除外事由なく判示日時場所で判示覚せい剤七百七十七本を所持していたとの事実を認定し、そのアンプルの内容物が覚せい剤であることを確定するについて、そのアンプル全部につき化学的検査を行わず一部の二本だけを検査資料として試験を行つた結果を記載した警察技官古賀茂次作成の物品検査報告書を掲げてその全部が覚せい剤であることの認定の資料に供していることは、所論のとおりである。

しかし、原判決の挙示した各証拠を綜合すると、右注射液入りアンプル七百七十七本は(一)司法警察員が昭和二十八年十一月十一日覚せい剤取締法違反被疑事件について被告人の肩書自宅を捜索した結果、同家六畳の間天井、同室床の間、押入等から発見されたもので、その全部が被告人方で同時に差し押えられたものであること、(二)それは被告人が同年九月五日頃、自宅で朝鮮人金山某からヒロポンと称するもの一千本を代金八千円で買いうけてこれを自宅内の各所に分散隠匿し、爾後司法警察員により差し押えられるまでの間、他に売り捌いていた残品で、その全部を一括して同一人から同時に入手したものであること、しかも(三)その注射液入りアンプルの種類、形状、液の透明度等一見して同種同質のものであることが容易に看取され、異種異質のものの混在していることの認め難いことなどが明らかであるから、このような場合に、本件注射液入りアンプル七百七十七本が覚せい剤であるかどうかを検査するに当り、その全部について一々試験をしなくとも、任意にその一部を資料として試験をした結果、それが覚せい剤であると認めらるれば、他の検査をしなかつた部分のアンプルの内容物も亦、右と同一の覚せい剤であると推認することは、経験則は勿論採証の法則にも違背せず、毫もその措置が合理性に違反するということはできないので、原審が前記のとおり注射液入りアンプル二本だけについて試験をした結果、その内容物は覚せい剤を含むと記載された前掲物品検査報告書を証拠にとり、これに基いて被告人の所持していた注射液入りアンプル七百七十七本全部が覚せい剤であると認定したことは、まことに正当であり、所論のように証明不十分の認定に基く事実誤認の違法があるとはいえない。論旨は理由がない。

(裁判長裁判官 西岡稔 裁判官 後藤師郎 裁判官 大曲壮次郎)

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